
こんな疑問に答えます。
FXの「ロスカット」とは、含み損が発生し、一定上の損失が出ると強制的にポジションを解消させられることをいいます。
強制決済させられるわけですから、当然不本意なトレードになります。
特にデイトレードなど短期トレードの場合、レバレッジをかけていますから、突発的な為替変動でロスカットとなってしまう場合があります。
この記事では、ロスカットの仕組みからその回避方法まで詳しく解説していきます。
FXを始めるために、まずは覚えておくべきとても重要な知識となりますので、ぜひこの際にしっかりと覚えておきましょう。
1.FXのロスカットとは?
「ロスカット」とは、損失があまりに大きくならないよう、損失額を固定させる仕組みです。
損失が一定の割合に達したら、FX業者が強制的にポジション閉じて清算してしまうのです。
なぜ、こんなことをするのでしょう?
詳しく説明します。
仮に、レートが逆行した場合、保有ポジションに含み損が生じます。この含み損が大きくなると、預け入れた証拠金以上の損失を被る可能性が出てきます。
もし、ロスカットがなければ、証拠金を追加入金(追証)できないと、口座がマイナスとなってしまい、FX業者への債務が発生することになります。
ロスカットは、こうした事態を避けるため、投資家保護の観点から備え付けられている仕組みです。
ロスカットは、FX業者から強制的に取引停止させられる、いわばレッドカードのようなものと捉えてください。
2.ロスカットとなる条件とは?
では、次にロスカットの条件について解説していきます。
次の算式で導き出された証拠金維持率が「一定の割合以下」に割り込んだ場合、ロスカットが発動されます。
有効証拠金 ÷ 必要証拠金額 × 100 = 証拠金維持率(%)
有効証拠金・・・証拠金に評価損益を加味した金額
必要証拠金額・・・1lot当たりの必要証拠金額×lot数
ここで言う「一定の割合」とは、FX業者によって異なります。
ですので、自分が使っているFX業者のホームページで確認してみてください。20%~100%とこの割合については、業者によって幅があるようです。
3.マージンコールとは?
証拠金維持率が、FX業者が定めた割合以下にまで低下すると、FX業者が証拠金を追加するようにメールで求めてきます。
これが「マージンコール」です。
ロスカットは、いわばレッドカードと言いましたが、このマージンコールはイエローカードです。
ロスカットによって一発退場の前に、マージンコールによって一度警告されるわけです。
このマージンコールのある業者は、毎日特定の時間に証拠金維持率の計算をします。
そこで、規定の証拠金維持率よりも下回ると、登録したメールアドレスに警告のメールを送信します。
これをそのまま放置しておくと、ロスカットされてしまいますから、速やかに証拠金を引き上げる必要があります。
証拠金を引き上げるには、次の2つの方法があります。
3-1 ポジションを一部決済する
ポジションを一部決済すると必要証拠金は少なくなります。
必要証拠金を少なくすることで、証拠金維持率を引き上げることができます。
3-2 証拠金を追加入金する
また、証拠金を追加入金することで、有効証拠金を増やすことができます。
有効証拠金が増えれば、証拠金維持率は上がります。
4.具体的な事例紹介
ここまで、ロスカットとマージンコールについて解説してきました。
より理解を深めるために、具体的な例を出して見てみましょう。
- 口座入金額(証拠金)は10万円
- レートは1ドル=100円
- ドル円1万通貨のロングポジションを保有(必要証拠金は4万円)
- マージンコールとロスカットルールは下図のとおり
このような設定で、どれだけレートが逆行したら、
- 新規注文ができなくなったり、
- マージンコールが発生したり、
- ロスカットが発動されたりするのか
これらを具体的に見ていきましょう。
※ここでは、スプレッドやスワップポイントは考慮に入れません。また、必要証拠金は、その時のレートで算出されますから、実際にはレート変動によって必要証拠金は変わります。イメージを掴んでもらうための仮計算ですので、ご了承ください。
4-1 新規注文ができなくなるのは
証拠金維持率が100%以下となったら、新規注文ができなくなる場合、いくらレートが逆行すればその状況になるのでしょうか?
前述した、
有効証拠金 ÷ 必要証拠金額 × 100 = 証拠金維持率(%)
この式に代入すると、
有効証拠金÷4万円(必要証拠金額)×100=100(証拠金維持率(%))となり、4万円がこの基準金額となることがわかります。
証拠金がこの4万円に達するまでの余力を計算すると、次の式により6万円ということがわかります。
10万円(証拠金)-4万円(基準金額)=6万円(余力金額)
6万円(余力金額)÷1万通貨(ポジション量)=6円
となり、6円以上下落した場合、新規注文できなくなることがわかります。
4-2 マージンコールが発生するのは
証拠金維持率が70%以下となったら、マージンコールが発生する場合、いくらレートが逆行すればその状況になるのでしょうか?
上記の計算例を参考にして計算すると、
有効証拠金÷4万円(必要証拠金額)×100=70(証拠金維持率(%))
となり、2.8万円がこの基準金額となることがわかります。
証拠金がこの2.8万円に達するまでの余力は、次の算式によって導き出されます。
10万円(証拠金)-2.8万円(基準金額)=7.2万円(余力金額)
7.2万円(余力金額)÷1万通貨(ポジション量)=7.2円
となり、7.2円以上下落した場合、マージンコールが発生することになります。
4-3 ロスカットとなるのは
証拠金維持率が50%以下となったら、ロスカットとなる場合、いくらレートが逆行すればその状況になるのでしょうか?
上記の計算例を参考にして計算すると、
有効証拠金÷4万円(必要証拠金額)×100=50(証拠金維持率(%))
となり、2万円がこの基準金額となることがわかります。
証拠金がこの2万円に達するまでの余力は、次の算式で導き出されます。
10万円(証拠金)-2万円(基準金額)=8万円(余力金額)
8万円(余力金額)÷1万通貨(ポジション量)=8円
となり、8円以上下落した場合、ロスカットが発動されることになります。
5.よくあるロスカット要因とその回避策
よくあるロスカットの要因とその回避策です。
5-1 急激な為替変動
急激な為替変動が起きると、発注していた価格よりも不利な価格で約定する場合があります。
注文価格と約定価格の差、いわゆる「スリッページ」と呼ばれるものです。
また、週末に為替相場に大きく影響する経済ニュースが出ると、週末の終値から月曜の始値に大きなギャップが生じることがあります。これを「窓開け」と言ったりします。
スリッページや窓開けによって、有効証拠金が減少し、ロスカットとなる場合があります。
大きな為替変動が起こるケースとしては、
- 重大な金融政策の突然の変更
- 米雇用統計など重要指標の発表
- 週末の要人発言や政治情勢
などが考えられます。
これを避けるためには、スリッページにおいては、重要なイベントや経済指標前に指値を置かないことや、そうした時にエントリーをしないようにすること。
窓開けについては、週末に全てポジションを決済しておくことなどが考えられます。
5-2 損切りを設定していない
これは、ロスカットで最もよくあるケースかもしれませんが、損切り設定をしていない、もしくは損切りできないケースです。
損切りしないことで、ずるずると含み損が膨らみ、最終的にロスカットとなってしまうわけです。
損失を限定するために、絶対にエントリーと同時に損切りを設定しておきましょう。
損切りの大切さについては、こちらの記事でも解説しています。
≫参考:投資効率を最大化する正しい損切り(ロスカット)の知識のすべて
また、証拠金の限界までポジションを持ってしまうと、含み損となった場合、すぐにロスカットになる場合があります。
証拠金と必要証拠金額をしっかり把握し、あまりぎりぎりの資金でトレードしないことです。
損切りを設定しつつ、十分な余裕資金を持ってトレードすることが大切です。
5-3 出金
これは割と見落としがちですが、口座から出金してしまうと、証拠金が減少し、ロスカットされやすくなります。
特に、ポジションを保有している時の出金には注意が必要です。
- ポジションを決済してから出金する
- 出金した場合、証拠金維持率がどれくいになるか事前に計算しておく
などが対策になります。
6.まとめ
ロスカットは、「証拠金以上の損失が生じる前に市場から撤退してください」というFX業者からの最後通告です。原理的に、このロスカットによって証拠金以上の損失を防ぐことができます。
いわばトレードのための安全装置のようなものですが、リスクを抑えるには、やはり、証拠金に対して余裕を持ってポジションを持つことに尽きます。
車に例えると、ロスカットという最終的には止まる自動ブレーキがあるのを理解しつつ、スピードは自分でコントロールしていくというイメージでしょうか。
ロスカットは、FXを始めるのならまずは知っておくべきとても重要なルール。ぜひ、この際に押さえておいてください。